ワイドの本棚

【ワイドの本棚】『バッタを倒しにアフリカへ』(前野 ウルド 浩太郎:光文社新書)

 

博士のドタバタ珍道中!?

いや、失礼。
バッタ研究のために訪れたアフリカでの顛末を笑いと涙で綴った・・・やっぱ珍道中か。

著者は、昆虫学者の前野 ウルド 光太郎 氏。サバクトビバッタの研究で博士号を取得した農学博士です。
“ウルド”というミドルネームが付いていますが、東北出身のゴリゴリの日本のお方。(ミドルネームを授かる経緯は、本書にあります。)

そんなバッタ博士が、なぜアフリカへ行くことになったのか。果たして、アフリカでバッタ博士を待ち受けていたものは。

 

博士の異常な愛情

そもそも、著者はなぜバッタを研究して博士にまでなったのか。それは、

子供の頃からの夢 「バッタに食べられたい 」を叶えるためなのだ 。

・・・これはアカンやつですね。
あの死神博士も「怪人作りの名人」という異名を持ってましたし、やはり博士と名のつく人はひと味もふた味も違います。

夢の内容はさておき、子供の頃の夢を実際に叶えられた人は、なかなかいないんじゃないでしょうか。(私など、夢が何だったかもはっきり思い出せない。)
歳を重ねるに連れ、「夢は叶う」と言うのがだんだん恥ずかしくなるのですが、著者の純粋な気持ちは素直に羨ましく思いました。

 

末は博士か大臣か

ちびっ子たちの将来の夢にたいがい上がる「博士」。何だか偉くてインテリな香りが漂います。
が、実際にはかなり切実な現実があるようです。(いわゆるポスドク問題)
研究で食べていけるのは、ひとにぎりの研究者のみ。それ以外は明日をも知れぬ身だそうです。
ましてや、著者はバッタの研究。これまたニッチな・・・研究が何の役に立つのか想像もつきません。
需要無きところに供給もなし。研究も同じです。バッタ研究で食べていけるのか?

ところが、あるところにはあるもんです。
アフリカでは、バッタの大量発生による農作物被害から深刻な飢饉が起こっているらしく、その対策のための研究が望まれているとのこと。
研究の場を求め博士は、勇んでアフリカ モーリタニアへ乗り込んでいきますが、なんとその時モーリタニアでは建国以来の大干ばつで農作物自体が育たず、逆にバッタがいない・・・
バッタ博士、バッタのいないアフリカでどうなるの。

 

バッタ博士がんばれ

私にとって、研究者のイメージはちょっとネガティブです。
以前現場勤めをしており、研究成果の試用に何度か立ち会ったことがあります。研究者が研究成果を現場で試すのですが、現場では役に立たないこともままありました。
そんな時の空気は微妙です。気を遣って、失敗することもあるよね的にやり過ごそうとする周りと、熟練職人の「これが現場なんだよ」と言わんばかりの視線。いたたまれない・・・
(研究者の方々すみません。あくまでも個人の感想ですので。)

さて、バッタ博士の研究はモーリタニアを救うことができたんでしょうか?
(終わりの方に、研究結果は論文発表前で詳しく話せない、というような記述があり、結局バッタ駆除できたのかよく分からなくて。)
今アフリカでは画期的なバッタ駆除が・・・みたいな武勇伝、いつか聞けたら嬉しいです。

博士は、バッタ界(?)の日本代表です。
遠いアフリカでがんばる日本の博士をこれからも応援したいと思います。

 

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